ヘラクレス座の恒星 GSC 03089-00929 (J175207.01+373246.3) の光度測定をやってみました。12.402等級(V)、スペクトルG型の主系列星です。
この星は系外惑星を持っており、この夏の間に1回トランジット法による検出(恒星の表面を惑星が横切るとき、光度がわずかに減少するのを観測する方法)をやってみたかったのですが、天候もタイミングも合わないうちに時期が過ぎてしまいました。これはその忘備録みたいなものです。なお観測・解析にあたっては大島様の「系外惑星を観測しよう 〜トランジット法観測入門〜」 http://otobs.org/photometry/LetsTryTransitObs.pdf を大いに参考にさせていただきました。
●撮影
撮影は、ピントをわざとはずした状態でおこないます。こうしておいたほうがシンチレーションによるばらつきが抑えられ、また星像の飽和による失敗も少なくなるということです。R200SSのような反射鏡筒の場合、ピントをずらすと星像がドーナツ状に真ん中に穴が開いた形になりますがそれは問題なし。内外像で輪郭がはっきりしているほうへ少しずらしました。広がった星像が5ピクセル以上に肥大するようにしますが、あんまり広げすぎると開口測光がやりにくくなるので、そのへんは注意します。
(全体像 マークした恒星がGSC03089-00929)
(拡大図)
R200SS+コレクターPH D=200mm fl=760mm F3.8 EM200temma2でノータッチガイド
Canon EOSkissX3(seo-sp2) ノーフィルター ISO3200 露出9sec
パソコン画面で数えてみたら11〜12ピクセルでした。これぐらいでいいんじゃないでしょうか。また目標のカウント数は10000以上。これについては計測してみないとよくわからなかったので、少し長めでしかも飽和しないように露出時間を決定しました。
資料によってはダークフレームやフラットフレームを撮れとあったり、処理してはいけないとあったりでイマイチはっきりしません。今回はとりあえず両方なしでやってみることにしました。
●比較星の選定
今回は十分に写野が広く、星もたくさん写っていたので撮影後に比較星を決めました。比較星の条件は
1⃣目標の星より明るいこと
目標星よりできるだけ明るい星のほうが等級の誤差が少なくなるようです。ただあまりに明るい星は飽和したり、広がりが大きすぎて開口測光がしづらかったりで、多少問題があるかもしれません。
2⃣目標の星と色指数が近いこと
本番の観測は2〜3時間に及ぶため、例えば比較星が青みの強い星だったりすると、高度が低くなるにつれて大気による減衰が大きくなり、光度の比較に支障がでます。今回は練習なので短時間しか撮影しませんが、一応本番のつもりで色指数も考慮しました。誤差を少なくするために、比較する星は目標星とB-V色指数が近いものか、それができない時は目標星の色指数を挟み込むようなものを選びます。目標星のV等級は12.402 B-V色指数は0.712なので、simbadを参照して
@ V等級9.91 B等級10.39 (B-V 0.45)の BD+37 2963
A V等級11.72 B等級12.70 (B-V 0.98)の TYC 3089-995-1
以上の目標星のB-V色指数を挟み込むような2星に決定しました。
●解析
解析にはステライメージ8の光度測定機能を使用しました。
測定方法:半自動
恒星/天体径:10ピクセル
SKY内径:20ピクセル
SKY幅:5ピクセル
画面の「天体」はこのブログでいう目標星、「標準星」は比較星となります。カウント数は@星が642845、A星が108963、目標星が62698とあります。十分な値ですが、目標の10000に比べるとちょっと強すぎたかもしれません。本番は調整します。とりあえず6枚ほどの画像を手動で測光した結果は以下の通り。
12.342(等)
12.327
12.389
12.370
12.378
12.376
中央値は12.373等、VフィルターなしでもV等級12.402等に対し誤差は0.029等。ばらつきは0.062等ですが途中から安定しているように見えます。本番もこの程度のばらつきなら、移動曲線を引けばどうにか通過時の減光(この星のばあい0.0291等)は検出できると思うのですが、どうでしょうね
●恒星までの距離を推測
参考程度ですが、HR図を使ってこの星までの距離を推測してみました。
目標星はスペクトルG型の主系列星なので、HR図から絶対等級はおおよそ+5等
見かけの等級をm、絶対等級をM、距離をr (パーセク)とすると
m - M = 5log10 r - 5
12.373 - 5 = 5log10 r-5
r = 298.263424577877
298パーセク、1パーセクは約3.26光年なので971光年。
実際は233パーセク、760光年とされているので・・・うーん、まあ ぐらいの結果でしょうか。

