2019年09月23日

光度測定をやってみた



ヘラクレス座の恒星 GSC 03089-00929 (J175207.01+373246.3) の光度測定をやってみました。12.402等級(V)、スペクトルG型の主系列星です。


この星は系外惑星を持っており、この夏の間に1回トランジット法による検出(恒星の表面を惑星が横切るとき、光度がわずかに減少するのを観測する方法)をやってみたかったのですが、天候もタイミングも合わないうちに時期が過ぎてしまいました。これはその忘備録みたいなものです。なお観測・解析にあたっては大島様の「系外惑星を観測しよう 〜トランジット法観測入門〜」 http://otobs.org/photometry/LetsTryTransitObs.pdf を大いに参考にさせていただきました。



●撮影

撮影は、ピントをわざとはずした状態でおこないます。こうしておいたほうがシンチレーションによるばらつきが抑えられ、また星像の飽和による失敗も少なくなるということです。R200SSのような反射鏡筒の場合、ピントをずらすと星像がドーナツ状に真ん中に穴が開いた形になりますがそれは問題なし。内外像で輪郭がはっきりしているほうへ少しずらしました。広がった星像が5ピクセル以上に肥大するようにしますが、あんまり広げすぎると開口測光がやりにくくなるので、そのへんは注意します。


(全体像 マークした恒星がGSC03089-00929)
全体図3.jpg

(拡大図)
詳細図2.jpg

R200SS+コレクターPH D=200mm fl=760mm F3.8 EM200temma2でノータッチガイド
Canon EOSkissX3(seo-sp2) ノーフィルター ISO3200 露出9sec


パソコン画面で数えてみたら11〜12ピクセルでした。これぐらいでいいんじゃないでしょうか。また目標のカウント数は10000以上。これについては計測してみないとよくわからなかったので、少し長めでしかも飽和しないように露出時間を決定しました。

資料によってはダークフレームやフラットフレームを撮れとあったり、処理してはいけないとあったりでイマイチはっきりしません。今回はとりあえず両方なしでやってみることにしました。



●比較星の選定

今回は十分に写野が広く、星もたくさん写っていたので撮影後に比較星を決めました。比較星の条件は


1⃣目標の星より明るいこと

目標星よりできるだけ明るい星のほうが等級の誤差が少なくなるようです。ただあまりに明るい星は飽和したり、広がりが大きすぎて開口測光がしづらかったりで、多少問題があるかもしれません。


2⃣目標の星と色指数が近いこと

本番の観測は2〜3時間に及ぶため、例えば比較星が青みの強い星だったりすると、高度が低くなるにつれて大気による減衰が大きくなり、光度の比較に支障がでます。今回は練習なので短時間しか撮影しませんが、一応本番のつもりで色指数も考慮しました。誤差を少なくするために、比較する星は目標星とB-V色指数が近いものか、それができない時は目標星の色指数を挟み込むようなものを選びます。目標星のV等級は12.402 B-V色指数は0.712なので、simbadを参照して

@ V等級9.91 B等級10.39 (B-V 0.45)の BD+37 2963
A V等級11.72 B等級12.70 (B-V 0.98)の TYC 3089-995-1

以上の目標星のB-V色指数を挟み込むような2星に決定しました。

詳細図3.jpg



●解析

解析にはステライメージ8の光度測定機能を使用しました。

アパーチャー.jpg

測定方法:半自動
恒星/天体径:10ピクセル
SKY内径:20ピクセル
SKY幅:5ピクセル


画面の「天体」はこのブログでいう目標星、「標準星」は比較星となります。カウント数は@星が642845、A星が108963、目標星が62698とあります。十分な値ですが、目標の10000に比べるとちょっと強すぎたかもしれません。本番は調整します。とりあえず6枚ほどの画像を手動で測光した結果は以下の通り。

12.342(等)
12.327
12.389
12.370
12.378
12.376


中央値は12.373等、VフィルターなしでもV等級12.402等に対し誤差は0.029等。ばらつきは0.062等ですが途中から安定しているように見えます。本番もこの程度のばらつきなら、移動曲線を引けばどうにか通過時の減光(この星のばあい0.0291等)は検出できると思うのですが、どうでしょうね



●恒星までの距離を推測

参考程度ですが、HR図を使ってこの星までの距離を推測してみました。


目標星はスペクトルG型の主系列星なので、HR図から絶対等級はおおよそ+5等

HR.jpg

見かけの等級をm、絶対等級をM、距離をr (パーセク)とすると

m - M = 5log10 r - 5

12.373 - 5 = 5log10 r-5

r = 298.263424577877


298パーセク、1パーセクは約3.26光年なので971光年。

実際は233パーセク、760光年とされているので・・・うーん、まあ ぐらいの結果でしょうか。






posted by Northerncross at 15:00| 岡山 ☁| Comment(0) | 観測 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月03日

2019年の土星

8月2日の土星です。



梅雨が明けてシーイングも安定してきましたが、ここ岡山では空全体にモヤがかかったような感じで透明度がすごく悪く、木星と比較して暗い土星を撮影するにはちょっとつらい状況です。この夜もシャッタースピードを30ms以上にして対応しました。


04.png

R200SS 2.5xPowermate ASI290MC ZWO IR/UVカットフィルター ROI=640x480 FPS (avg.)=31 Shutter=32.20ms Gain=300 (50%) AS!2 WinJUPOS RS6 SI6



そろそろ土星も終盤でしょうか。今年はMyBEST更新は難しそうです。
posted by Northerncross at 23:00| 岡山 ☀| Comment(0) | 天体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月19日

恒星のスペクトルをテスト撮影

StarAnalyser100を使用してクエーサーの輝線スペクトルを検出することには何とか成功しましたが、同じ機材(R200SS, 2.5xPowermate, ASI290MC)で恒星のスペクトルを撮ろうとしたところどうもうまくいきません。金属の吸収線どころか、水素の吸収線もはっきりしない状態です。



どうやら合成fl=2000mmのR200SS+ASI290MCだとシンチレーションとか恒星像の肥大により、細かい線がブレて消えてしまうのが原因のようです。そこで付属の解説冊子にも紹介されているように、デジイチのカメラレンズの先に取り付ける方法で試してみました。



IMG_2331アルタイル2.JPG

IMG_2338アークトゥルス2.JPG

Canon EOSkissX3(APS-C, センサ−サイズ22.3mm x 14.9mm) EF-S 55-250mm F4-5.6IS(200mmF5.6, 35mm換算で322mm) ISO800 30秒固定撮影



上はわし座のアルタイル、下はうしかい座のアークトゥルスの0〜1次像です。なかなかいい感じに写りました。。



アルタイルのスペクトル型はA7X、水素の吸収線が濃く出てA型の特徴がよく出ていると思います。一方のアークトゥルスはスペクトル型がK0V、こちらは水素の吸収線は目立たなくなり、代わりに多数の金属線が見えています。まずはアルタイルをRSpecで解析してみると



アルタイル1-1.jpg

E382A2E383ABE382BFE382A4E383AB2-1.jpg


上はそのままの解析画面、下は水素のバルマー線を表示したものです。Hβ、Hγの吸収線がよく見えており、Hαは案外はっきりしませんが、検出はできています。ただ左右に若干ズレがあるようにもみえます。次にアークトゥルスのほうは



アークトゥルス1-1.jpg

アークトゥルス2-1.jpg


細かい金属線がアルタイルよりたくさん見えます。下側のチャートはスペクトルK型の星で特徴となるバルマー線を表示しています。目立つのはFe、Naなどの吸収線のようです。


レンズ先付け方式だとスペクトルの詳細がわかるのは確認できましたが、同時に問題点もいくつか見えてきました。



@適正なレンズの焦点距離の問題

今回は55-250mmズームの200mmにあわせて撮影しました。なるべく焦点距離を長くしたほうが1次スペクトルの幅が広がり、より詳細なデータが得られそうに思います。今回は1等星なので十分な明るさに写っていますが、これが3等星、4等星・・となってくるとなかなか難しそうです。ISO感度をあげるにも限界があるので、100mm以下に縮めて撮影することになると思いますが、あまりに焦点距離が短いと他の星のスペクトルと交錯し、識別できなくなる気がします。トレーリングさせず、ガイド撮影してどの程度写るかテストしてみる必要があります。



Aズームレンズによる周辺像の歪み

高級なズームレンズではないので、画面周辺部ではひずみが発生します。あまり画面の端のほうは使用しないようにし、また画像中心部の同じ位置、同じ方向にスペクトルが収まるようにしたほうがよさそうです。それか適当な単体レンズを入手するかですね。次はカメラを赤道儀に固定して撮影するようにします。



Bキャリブレーションの精度

キャリブレーションをするときは恒星を0次とし、水素の吸収線を使って行いますが、アークトゥルスのように水素のバルマー線がはっきりしない場合は他の画像を引用した1点アライメントを行うしかなく、精度に不安があります。まあこれも上記のように毎回画面の同じ位置で撮影するようにすれば誤差を最小限に抑えられそうです。



Cスペクトル型の識別方法

これはただ研究不足なだけですが、たとえばある恒星のスペクトルチャートがあるとして、そのスペクトル型を調べて何型か確定する、ということがまだできません。RSpecには細かく分けられたスペクトル型の参照データがありますが、その参照データと実際のデータをどのように比べて判断したらよいのか不明なままです。単純に見比べて〇〇型、というものでは無いようです。


梅雨が明けたらまたいろいろやってみようと思ってます。

posted by Northerncross at 19:00| 岡山 ☁| Comment(0) | 観測 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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